トピックス 8:
糖尿病を合併した冠動脈患者の治療戦略
糖尿病患者におけるアスピリンを用いた急性冠症候群の一次予防試験
- 熊本大学大学院医学薬学研究部・循環器病態学
- 中山 雅文氏
2型糖尿病患者を対象とした英国の大規模臨床試験UKPDS33では、糖尿病患者の大血管障害を抑制するためには、血糖コントロールだけでは不十分であることが示された。種々の臨床研究やメタ解析により2型糖尿病に対するアスピリンの有用性が示されたことから、ADA(米国糖尿病協会)では1997年以来、2型糖尿病患者の動脈硬化性疾患の一次予防に低用量アスピリン療法を推奨してきた。そのため、米国における糖尿病患者のアスピリン内服率は1990年には20%であったが、2000年には66%にまで上昇した。
一方、日本人では心筋梗塞3枝病変患者に糖尿病合併率が高いこと、2型糖尿病患者では死亡年齢が10歳程度低く、かつ心筋梗塞や脳血管障害による死亡例が多いといった知見が得られており、両者の関連性は明らかである。しかし、わが国におけるアスピリン内服率は数%と著しく低い。
そこで循環器病態学の研究グループは、日本人の糖尿病患者を対象に、アスピリンによる動脈硬化性疾患の一次予防効果を実証したエビデンスが必要と考え、JPAD(Japanese primary Prevention of atherosclerosis with Aspirin for Diabetes)研究を計画、実施。本セッションで第3回中間集計の結果を報告した。
アスピリンの心血管イベント抑制効果を検討
JPAD研究の目的は、日本人の2型糖尿病患者におけるアスピリンの脳・心血管イベントの一次予防効果を検討することである。対象は冠動脈疾患や脳血管障害などの動脈硬化性疾患と診断されていない30〜85歳の2型糖尿病患者。エンドポイントは心血管死、脳血管障害、急性冠症候群、末梢動脈疾患などを含む総心血管系イベントとした。患者登録は2002年12月1日から開始、2005年6月1日に完了して、2,534例を登録できた。このうち1,264例がアスピリン(81あるいは100mg/日)投与群に、1,270例がアスピリン非投与群に無作為に割り付けられ、現在観察を継続中である。第3回の予後観察終了日を2005年7月1日とし、587日間(中央値)まで追跡が進んでいることを発表した。
国際的エビデンスの構築を目指す
中山氏は、JPAD研究によって脳・心血管イベントのハイリスク患者である2型糖尿病における、低用量アスピリン療法のエビデンス構築ならびに日本人における低用量アスピリンのリスク/ベネフィットの評価に大きな期待を示し、この研究により得られるエビデンスは国際的にも新しく、わが国から世界に発信しうる情報として大きな価値があることを強調した。また同氏は本研究が限られた予算で実施されているにもかかわらず、多くの参画医師の献身的な協力によって順調に進められていることに重ねて謝意を表した。



