ポスターセッション:

アテローム性動脈硬化症(臨床)

動脈硬化性疾患危険因子を有する高齢者に及ぼすアスピリンの一次予防効果に関する研究(JPPP): 経過報告

帝京大学医学部内科学
寺本 民生

脳卒中、心筋梗塞などのアテローム血栓症は、日本人の死因の約1/3を占めており、急速な高齢化社会の到来や食生活の欧米化に伴い、今後、さらなる増加が懸念される。アスピリンはアテローム血栓症の血管イベント予防に関するエビデンスが最も多く、医療経済効果の大きい抗血小板薬である。欧米では脳・心血管イベントの一次予防効果が報告されているが、日本人における一次予防効果および安全性のエビデンスは確立されていない。寺本氏らは、アスピリン腸溶錠による一次予防のリスク/ベネフィットを評価するため厚生労働省科学研究費補助金による臨床研究であるJPPP (Japanese Primary Prevention Project with Aspirin)を開始、今回はその経過を報告した
http://poppy.ac/j-ppp/)。

危険因子を有する高齢患者を対象とした多施設共同ランダム化比較試験

寺本氏によれば、JPPPは脳血管、冠動脈疾患を含む動脈硬化性疾患を診断されていない高血圧症、高脂血症または糖尿病を有する高齢患者(60〜85歳)を対象とした中央登録法による多施設共同ランダム化比較試験で、登録期間は2005年3月〜2006年9月、観察期間は2005年3月〜2010年9月の予定である。

登録された症例は、既存の治療にアスピリン腸溶錠100mg/日を併用する群または既存の治療をそのまま継続する群にランダムに割り付けられる。予定登録症例数は各群5,000例ずつ、合計10,000例。

調査スケジュールについては、観察期間は最短で4年(48か月)とし、登録後は1年に1回の追跡調査を実施することとした。登録時には患者背景、血圧、血清脂質、血糖、体重、喫煙状況を調査し、その後は1年ごとにイベント、有害事象、体重、喫煙状況の調査および治療対象の疾患の検査を必須とし、服薬状況および治療対象以外の疾患の検査は可能な限り実施することとした。

一次エンドポイントは、脳・心血管系要因による死亡、虚血性または出血性の非致死性脳血管障害、非致死性心筋梗塞の複合エンドポイント。二次エンドポイントは、脳・心血管系要因による死亡、虚血性または出血性の非致死性脳血管障害、非致死性心筋梗塞、一過性脳虚血発作、狭心症、外科手術またはインターベンションを要する動脈硬化性疾患の複合エンドポイントのほか、脳・心血管系要因による死亡、輸血または入院を要する重篤な頭蓋外の出血などとした。

毎年5〜10万人の脳梗塞、心筋梗塞の発症回避、医療費削減などに期待

寺本氏はJPPPの特徴として、1)調査項目が簡潔で追加の患者負担や参画医師の負担がないこと、2)日本循環器学会専門医認定更新単位の付与などさまざまな試験推進の施策がとられていること、3)患者に対する基礎疾患治療啓発・調査協力をアピールするポスターやリーフレットの作成を挙げた。また、2005年3月20日現在、約500施設が参画し、約2,600例が登録されており、参画医療機関を広く募っているところであるという。

寺本氏は最後に、JPPPの意義および期待される成果に言及、「JPPPによりアスピリンの一次予防が確立されれば、毎年5〜10万人の脳梗塞、心筋梗塞の発症が回避され、患者およびその家族のQOLは大幅に向上するだろう。さらに、アスピリンは他の抗血小板薬と比べて極めて安価であり、日本の医療費、介護費の削減効果が期待される」と述べた。

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