シンポジウム 2:
Pharmacological Intervention for Coronary Artery Disease
(冠動脈疾患に対する薬理学的介入)
α-グルコシダーゼ阻害薬が糖尿病合併の冠動脈疾患患者の新しい治療選択肢に
- 岐阜大学大学院医学研究科再生医科学循環病態学・
呼吸病態学・第二内科 - 湊口 信也氏
PCにはミトコンドリアKATPチャネル開口作用が関与
再灌流後に短時間の虚血を経験すると、心筋梗塞後の梗塞巣の著明な縮小がもたらされる。この現象は虚血性プレコンディショニング(PC)と呼ばれ、動物モデルだけでなく、ヒトでも認められている。虚血性PCを誘導するメディエータには、アデノシン、ブラジキニン、ノルアドレナリン、アンジオテンシンII 、オピオイド、フリーラジカル、プロテインキナーゼCの活性化、膜K+依存性ATP(KATP)チャネル開口、ミトコンドリアKATPチャネル開口などがあるが、臨床で用いられているのはKATPチャネル開口作用を有するニコランジルだけである。
イヌの心臓では、虚血時間の延長とともに嫌気的糖代謝が亢進し、グリコーゲン分解および乳酸産生が増大するが、PCによってその程度は抑制される。そこで湊口氏らは、虚血期間に薬理学的にPCを誘発しグリコーゲン分解を抑制すれば、心保護作用が得られるという仮説を立てた。
そこで、湊口氏らは、STOP-NIDDM試験において糖尿病薬としてはじめて心筋梗塞発症抑制効果が確認されたアカルボースに着目。アカルボースがウサギの心筋梗塞サイズに及ぼす影響について検討した。
虚血1週間前からアカルボース(30mg/100g)を含む餌を与えたところ、有意な梗塞サイズ縮小効果が認められた。この梗塞サイズ縮小効果は、ミトコンドリアKATPチャネルの阻害剤である5HDを虚血前に静注することによって完全に抑制された。このことより、アカルボースによる梗塞サイズ縮小効果は、意外にもミトコンドリアKATPチャネルの開口を介したものであると考えられた。
食後高血糖の抑制が心筋梗塞サイズの低下に寄与
次に同氏は、食後高血糖と心筋梗塞サイズの関連について考察した。スクロース含有食餌を投与した群では、スクロース非含有群に比し有意差はないものの食餌後血糖の上昇と心筋梗塞サイズ増大が示唆された。そこで、スクロース含有食餌にアカルボース(30mg/100g)を混餌し、1週間経口摂取させた。その後、30分間虚血した後、48時間後に屠殺して心筋梗塞サイズを測定したところ、アカルボースは梗塞サイズを有意に縮小させた。
その際の、食餌経口摂取60分後の血中グルコース濃度は、アカルボース群では有意に抑制され、その効果はスクロース含有食餌摂取群においても同様に認められた。このことから食後高血糖の抑制が心筋梗塞サイズの低下に寄与していることが示唆された。
以上の知見から湊口氏は「αGIは、糖尿病を合併した冠動脈疾患患者において、新しい治療選択肢になりうる」と締めくくった。



