2004年12月に発表された高血圧治療ガイドライン2004(JSH 2004)では、より厳格かつ24時間にわたる血圧コントロールの重要性が従来以上に強調されるとともに、カルシウム(Ca)拮抗薬やレニン・アンジオテンシン系抑制薬を中心とした併用療法を推奨するなど、わが国の高血圧治療に大きな反響を与えた。これを受けて、本学会ではJSH 2004が提唱する指針を基に、その差異を検証する実態調査報告が相次いだ。ここでは、そのうち3演題について紹介する。
降圧目標達成率は全体の50%前後、一方、糖尿病や腎障害合併例では10%強にとどまる
小嶋氏らが外来高血圧患者474例(男性205例、女性269例、平均年齢64±11歳)を対象に行った調査では、全体の血圧平均値は138.5±13.3/79.2±9.1mmHgで、<140/90 mmHgを満たしたのは54.4%であった。
高齢者において降圧目標値である<140/90mmHgを満たしたのは51.9%(138/266)、若年・中年者において<130/85mmHgを満たしたのは43.3%(90/208)であった。一方、糖尿病および腎障害合併例において、目標値<130/80mmHgを満たしたのは、それぞれ12.2%(23/188)および14%(20/143)にすぎなかった。
使用薬剤数は平均2.1±1.2で、高齢者と若年・中年者間で差はなかった。一方、糖尿病合併例は2.19±1.23で非糖尿病例の2.01±1.12に比しやや多い傾向がみられ、腎障害合併例では2.65±1.17と、非腎障害例の1.87±1.09に比し有意に多かった(p<0.0001)。なお、使用降圧薬は、77.3%がCa拮抗薬と最も頻用されていた。
小嶋氏は「全体の約50%で良好な血圧コントロールが得られていたものの、糖尿病や腎障害合併例では10%強にすぎず、降圧薬の増量に否定的な患者が多いという現状を踏まえた上で、患者教育やインフォームドコンセントの工夫が必要」とコメントした。
若年・中年者、糖尿病合併例で降圧が不十分な傾向
田口氏らが外来高血圧患者832例(男性431例、女性401例、平均年齢63.7±10.9歳)を対象に行った調査では、全体の血圧平均値は132.0±9.6/76.4±7.9 mmHgであった。
降圧目標値達成率については、高齢者では78.9%であったのに対し、若年・中年者では31.0%にすぎなかった。また、使用薬剤については、Ca拮抗薬が71.5%、次いでアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の50.2%で、利尿薬は16.5%と少なかった。使用薬剤数は平均1.8±0.9で、単剤が43.4%、2剤が39.4%、3剤が12.8%であった。
一方、全体の14.2%を占める糖尿病合併例での検討では、その降圧目標<130/80mmHgを満たしたのは22.9%と低値であった。糖尿病合併例では非糖尿病合併例に比し、3剤以上の併用例が多く、使用薬剤数は平均2.0±1.0と非糖尿病合併例の1.8±0.8に比べ有意に多かった(p<0.01)。
田口氏は「若年・中年者および糖尿病合併例において降圧が不十分な傾向がみられた。糖尿病合併例では降圧薬に対する反応性が悪いこと、薬剤数を増やすことへの抵抗も一因と考えられる」と結んだ。
JSH 2004が浸透しつつあることが明らかに
伊藤氏らは糖尿病合併高血圧患者339例(男性148例、女性191例、平均年齢65.4±12.0歳)を対象に、JSH 2004発表前の平成16年2〜5月と発表後の17年2〜5月における外来血圧および使用降圧薬を調査し、比較・検討を行うとともに、全体の約32%を占める腎症合併症例においても同様の検討を行った。
降圧薬の使用状況は、平成16、17年ともCa拮抗薬が最も多いが、平成16年に比べ17年ではARB、利尿薬の使用頻度がやや高くなっており、同様の傾向が腎症合併例でもみられた。使用薬剤数は、平成16年が平均1.4±1.1に対し17年は1.6±1.2と有意に増加した(p<0.001)。腎症合併例でもそれぞれ1.7±1.3、2.1±1.4と有意差がみられ(p<0.001)、特に平成17年では3剤以上の併用が増加していた。
その一方で、平成16、17年の血圧は全例および腎症例ともにほとんど変化せず、JSH 2004の降圧目標を基準にした場合のその達成率は、平成17年においてわずかに上昇したにすぎなかった。
伊藤氏は「JSH 2004発表後は薬剤の追加投与が多くなり、ガイドラインが治療現場に浸透しつつあることがうかがわれた。しかし、使用薬剤数が増えているにもかかわらず、降圧目標に到達した患者の割合は微増にとどまり、むしろ降圧療法の困難さが浮き彫りとなった」と述べ、「さらに積極的に降圧薬を追加して厳格な降圧治療を行う必要がある」と締めくくった。