臨床シンポジウム:JSH2004の徹底活用

JSH2004の重要な変更点

厳格な降圧による心血管合併症の抑制をめざす

大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学 荻原俊男氏

昨年(2004年)、日本高血圧学会は2000年に策定された高血圧治療ガイドライン(JSH2000)を改訂、JSH2004として発表したが、本学会では新しいガイドラインを周知徹底させ、実地診療での活用を促進する目的で表題のシンポジウムが開催された。JSH2004では、最近数年間に明らかになった臨床成績を反映し種々の改訂が行われたが、本シンポジウムでは荻原氏が重要な点を示し、それらが厳格な降圧による心血管合併症の抑制をめざしたものであることを強調した。

より厳格な降圧の必要性を強調

JSH2004の作成にあたってガイドライン作成委員会が留意したのは、次の4点である。

  1. 日本人特有の心血管病にも重点をおく。
  2. 日本人に適した非薬物および薬物療法を考慮する。
  3. 血圧の日内変動を考慮した治療を心がけ、家庭血圧の日常診療への応用に配慮する。
  4. 高血圧治療は長期にわたることから、医療経済にも配慮する。

JSH2004ではこれらを踏まえつつ、最新のエビデンスに基づく改訂が行われたが、その最も重要な特徴は、より厳格な降圧の必要性を強調したことである。そして厳格な降圧は24時間にわたって達成されるべきことも明記した。さらに、十分な降圧を行うために、非薬物療法の強化と降圧薬の併用を含む積極的な治療を推奨した。

高血圧患者の心血管合併症を抑制するために厳格な降圧が必要なことは、最近の大規模臨床試験から明らかになっているが、それらのデータを踏まえ降圧目標が設定された。若年〜中年者の降圧目標130/85mmHg未満はWHOガイドライン(1999年)、JSH2000の記す降圧目標と同じであるが、JNC7およびESH・ESCガイドライン(2003年)の勧告する140/90mmHg未満より厳格である。

脳血管障害慢性期の降圧目標について、JSH2000では収縮期血圧140〜150mmHg未満と幅をもたせていたが、JSH2004では140/90mmHg未満とした。糖尿病や腎障害を合併する場合の降圧目標は130/85mmHg未満から130/80mmHg未満に改められた。高齢者についてJSH2000では年代別に幅をもたせた降圧目標を設けたが、JSH2004では140/90mmHg未満に統一された。

ただし、高齢者では急激な降圧が危険を伴うことから、高齢者を65〜74歳の前期高齢者、75歳以上の後期高齢者に分け、後者で収縮期血圧が160mmHg以上の場合は150/90mmHg未満を暫定的な目標とした。しかし、後期高齢者においても最終目標が140/90mmHg未満であることに違いはない。

降圧薬の併用を含む積極的な治療を推奨

厳格な降圧を可能にするためには積極的な治療が必要だが、生活習慣の修正では、減塩目標が7g/日未満から6g/日未満とより厳しいものとなった。初診時の治療計画は心血管病リスクの程度に応じて決定されるが、薬物療法開始までの期間が短縮された。

生活習慣の修正を行っても140/90mmHg未満に低下しない場合、薬物療法が必要になる。JSH2000は低リスク群、中等リスク群の薬物療法開始までの期間をそれぞれ6ヵ月、3ヵ月としたが、JSH2004では前者を3ヵ月に、後者を1ヵ月に短縮した。また、高リスク群に対し初診時から薬物療法を開始する点は同じだが、数週以内に目標血圧に到達すべきこととされた。

JSH2000は降圧治療における第一次薬としてCa拮抗薬、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、利尿薬、β遮断薬、α遮断薬を掲げた。JSH2004もこれらを主要な降圧薬としたが、厳格な降圧を達成するためにCa拮抗薬とレニン-アンジオテンシン系抑制薬を中心とした併用療法と利尿薬の適切な利用を強調した。

荻原氏はJSH2004の改訂点を以上のように要約し、実地診療において新ガイドラインが勧告する積極的降圧治療を実践する必要性を強く訴えた。