臨床シンポジウム:JSH 2004の徹底活用

糖尿病、腎障害の降圧目標をいかに達成させるか

ARB、ACE阻害薬にCa拮抗薬、利尿薬の適切な併用がポイント

札幌医科大学第二内科 島本和明氏

一般の高血圧治療における降圧目標達成率は30%前後といわれる。このような中、より厳しい降圧目標値が設定されている糖尿病や腎障害合併の高血圧患者で、いかに目標値を達成するかが実地臨床における大きな問題となっている。島本氏は、わが国の高血圧治療ガイドライン(JSH 2004)が推奨する降圧目標値の意義を改めて整理するとともに、糖尿病、糖尿病性腎症、腎障害を合併した高血圧における降圧目標達成のための具体案を紹介した。糖尿病や腎障害合併高血圧の管理では、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)やACE阻害薬に加え、カルシウム(Ca)拮抗薬、降圧利尿薬を上手に用いていくのがポイントとなることを指摘した。

日本の疫学データも裏付ける降圧目標「130/80mmHg未満」

糖尿病は、心筋梗塞、脳卒中、閉塞性動脈硬化症、さらに網膜症、腎症、神経症など、あらゆる血管障害の引き金となる「血管病」といえる。このため、糖尿病患者では特に厳格な血圧管理が必要とされ、欧米のガイドライン、JSH 2004ともに、糖尿病合併高血圧に対しては、「130/80mmHg未満」という厳しい降圧目標値が設定されている。

この目標値は、HOTやUKPDSなどの介入試験、さらに島本氏らの疫学研究である端野・壮瞥町研究でのエビデンスを根拠にしたものであるが、さらに、今回の日本高血圧学会で発表されたばかりのJ-LITのサブ解析試験においても、収縮期血圧130mmHg以上あるいは拡張期血圧80mmHg以上で糖尿病合併患者の脳・心血管疾患リスクが有意に増大することが確認された。

糖尿病合併例にはARB、ACE阻害薬、長時間作用型Ca拮抗薬を推奨

しかし、問題はどのように「130/80mmHg未満」という厳しい降圧目標を達成するかである。JSH 2004は、糖尿病を合併した高血圧に対しては、血糖管理に加えて、「治療開始時の血圧が140/90mmHgであれば、直ちに薬物療法を開始し、130〜139/80〜89mmHgであれば、生活習慣の修正を3〜6ヵ月行っても降圧効果が不十分な場合に薬物療法を行う」とし、薬物療法の第一次薬として、ARB、ACE阻害薬、長時間作用型Ca拮抗薬の3種類を推奨している。これは、ARB、ACE阻害薬で、糖尿病合併高血圧患者の心血管疾患抑制効果が、 またARB、ACE阻害薬、Ca拮抗薬で、糖尿病新規発症抑制効果のエビデンスがそれぞれ得られているためである。

これらの第一次薬の単剤投与で、効果が不十分な場合には、増量、薬剤変更、または利尿薬を含む他剤の併用を行うのだが、「糖尿病合併高血圧では十分な降圧が得にくい症例が多く、3剤投与が必要な場合が多い。このことを認識し、あまり躊躇せずに併用を進めていく必要がある」と島本氏は説明した。

糖尿病性腎症や慢性腎疾患合併の患者に対しては、十分なエビデンスのあるARB、ACE阻害薬の使用が中心となるが、 2剤だけでは降圧目標の達成は困難であるため、Ca拮抗薬や利尿薬をいかに上手に併用していくかがポイントになるという。

また慢性腎疾患を合併した糖尿病に対しても、厳しい降圧目標を達成するには、ARB、ACE阻害薬を基礎薬とした上で、血清クレアチニン値、血清K値の上昇に注意しながら、多剤を併用していくことになる。これらの患者の血圧管理は困難なことが多く、厳格な降圧を実現するには、ニフェジピンCRなどの長時間作用型Ca拮抗薬の大量投与が必要になるケースが少なくない、と島本氏は指摘した。「糖尿病や腎障害合併高血圧の管理のコツは、ARBやACE阻害薬に加え、Ca拮抗薬、利尿薬を上手に用いていくこと」だという。