家庭血圧は外来診察時の血圧に比べ、臓器障害や予後に強く関連することが明らかになっており、わが国の高血圧治療ガイドラインであるJSH2004でも家庭血圧の測定を強く推奨している。しかし、家庭血圧値は測定される時間帯によって異なり、どの時点の血圧値が信頼性の高い予後予測指標になりうるかは未だ明らかではない。そこで、浅山氏らはわが国の疫学調査である大迫研究を基に、朝・起床後、晩・就寝前の血圧値と脳卒中発症リスクとの関連性を検討した成績を示し、朝・起床後の血圧が優れた予後予測指標になりうると報告した。
朝だけ高血圧群のリスクは朝・晩ともに高血圧群と同等
研究対象は、年齢40歳以上で基礎疾患がなく、朝と晩の家庭血圧をそれぞれ3回以上測定した住民1,766例。血圧測定は家庭血圧測定ガイドラインに準じ、朝の血圧は起床後1時間以内、排尿後、朝食前、降圧薬使用例では服薬前に測定し、晩の血圧は就寝直前に測定した。朝の血圧は高血圧治療ガイドラインの定める基準値135/85mmHg以上のものを高血圧と判定し、晩の血圧は大迫研究の先行報告に基づき133/83mmHg以上のものを高血圧とした。
この方法で対象住民を、1)朝・晩ともに正常血圧(NT)、2)朝は高血圧だが晩は正常血圧(M-HT)、3)朝は正常だが晩は高血圧(E-HT)、4)朝、晩ともに高血圧(S-HT)の4群に分類し、脳卒中発症リスクをCox比例ハザードモデルにより解析、NT群を基準として他の3群のハザード比を算出した。
解析の結果、脳卒中発症リスクの有意な上昇が認められたのはM-HT群とS-HT群で、ハザード比はそれぞれ2.41、2.34とほぼ同等であった。E-HT群でもリスクは上昇したが有意ではなかった。また、M-HT、S-HTにおけるリスクの上昇は、降圧薬を服用している集団においてより顕著であった。
不十分な降圧治療が朝の高血圧、朝・晩の血圧差の増加をもたらす
さらに浅山氏らは、朝と晩の血圧差(ΔM-E)と脳卒中発症リスクの関係についても検討した。対象住民をΔM-Eが1)<0mmHg、2)≧0〜<10mmHg、3)≧10〜<20mmHg、4)≧20mmHg の4群に分類し、予後の最も良好な群を基準として他の3群のハザード比を算出した。その結果、脳卒中発症リスクはΔM-Eが大きいほど高く、≧20mmHgの群で最も高かったが、基準群との間に有意差は認められなかった。しかし、この場合も降圧薬服用群でみると、ハザード比の上昇は有意であった。
以上の成績に基づき浅山氏は、朝だけ血圧が高い症例の脳卒中発症リスクは朝、晩ともに高血圧を呈する症例と同程度に高いことは明らかであり、さらに朝の高血圧、ΔM-Eの増加がともに降圧薬治療群でリスクを有意に上昇させたことは、降圧薬の薬効持続時間が不十分で朝の血圧上昇を抑制しきれていないことを強く示唆するものであるとし、家庭血圧に基づく高血圧治療の重要性が本研究から改めて確認されたとの見解を示した。