高血圧患者では、血中の脳利尿ペプチド(BNP)が高値であること、さらに左室肥大を合併する場合には特に高値であることが知られている。また、非高血圧患者でもBNPが高い場合には、将来高血圧を発症するリスクが高く、これらの知見からBNPは高血圧の危険因子であることが示唆される。一方、早期腎症のマーカーである尿中アルブミンは、心血管イベントのリスク因子としても重要な意義を持つとも言われ、さらに最近では、左室肥大の進展およびBNPの上昇とインスリン抵抗性との関連性も指摘されている。
こうした背景を踏まえて堺氏は、長時間作用型カルシウム拮抗薬ニフェジピン、アンジオテンシンII受容体拮抗薬カンデサルタン、さらに両者の併用が、降圧効果、心筋肥大、腎機能、インスリン抵抗性に及ぼす影響について検討した結果を報告した。
本研究の対象は本態性高血圧患者60例で、少なくとも2週間の経過観察の後、ニフェジピン群、カンデサルタン群、両剤の併用群にそれぞれ20例ずつランダムに割り付けた。高血圧の診断基準は収縮期血圧140mmHg以上and/or拡張期血圧90mmHg以上とし、血圧は5分間の安静の後、水銀血圧計を用いて座位にて上腕部で3回測定し、その平均値を採用した。
ニフェジピンにより尿中アルブミンが改善
3ヵ月間の治療後、血圧は3群でともに有意に低下したが、降圧度は併用群で最も大きく、次いでニフェジピン群で、カンデサルタン群で降圧度は最も小さかった。ニフェジピン群ではBNP、HOMA-R、LVMIには有意な変動は認められなかったが、尿中アルブミンは有意に低下した。一方、カンデサルタン群では、いずれにおいても有意な変動は認めらなかった。また併用群ではBNPに低下傾向が認められ、尿中アルブミンは有意に低下した。これらの評価項目の変化量と血圧低下量との関連性を検討したところ、ニフェジピン群と併用群では、尿中アルブミン低下量と血圧低下量に有意な相関が認められた。
まずは血圧を厳格に下げることが重要
これまで、基礎や臨床研究からレニン・アンジオテンシン系抑制薬の腎保護作用が報告されているが、今回の検討では、カンデサルタン群においてBNPや尿中アルブミンの有意な改善が認められず、一方ニフェジピン群では尿中アルブミンの有意な改善が認められた。
この理由として堺氏は、症例数が少なかったこともあるが、降圧のレベルがカンデサルタン群よりもニフェジピン群で良好であったことが大きな要因だとし、腎機能の低下や心血管イベント抑制には、まずは厳格な降圧が強く関与していると述べた。さらに、ENOCREやINSIGHTなどの大規模臨床試験において長時間作用型ニフェジピン製剤が、血管内皮機能の改善や動脈硬化の進展を抑制することが示されていることから、これらの血管保護作用が寄与した可能性も指摘し、今後さらなる検討が望まれると述べた。