カルシウム(Ca)拮抗薬は各種降圧薬の中でも特に降圧効果に優れ、忍容性も高いことから高血圧治療ガイドライン(JSH2004)でも第一次薬として位置づけられ、最も頻用されている降圧薬である。また、降圧治療の最大の目的である心血管イベントの発症抑制においても、近年の大規模臨床試験の結果から、従来薬と同等あるいはそれ以上の効果が証明されており、その確実な降圧効果が寄与していることは間違いない。一方、最近のエビデンスから、降圧とは独立した抗動脈硬化作用も示唆されており、注目を集めている。松岡氏はCa拮抗薬が動脈硬化を抑制する機序について、基礎研究による知見を総括するとともに、臨床的にも抗動脈硬化作用を示す成績が蓄積されつつあることを明らかにした。
Ca拮抗薬は内皮機能障害、炎症、酸化ストレスを抑制
Ca拮抗薬は確実な降圧効果を示し、忍容性が高く、かつその効果が患者の年齢や神経体液因子の影響を受けにくいという長所をもっている。これに加え、多くの大規模臨床試験で著明な心血管イベント抑制効果を示したことが、Ca拮抗薬の高い評価につながっているのは周知のとおりである。
しかし、Ca拮抗薬の特性はそれだけにとどまらず、降圧作用とは別に、動脈硬化を抑制する作用のあることが基礎研究から明らかになっている。例えば、Ca拮抗薬は高コレステロール食を負荷した動物において粥状硬化病変の形成を著明に抑制するが、その効果は脂質低下薬であるスタチンにも劣らないといわれる。問題は、Ca拮抗薬がどのような機序で動脈硬化を抑制するかであるが、動脈硬化形成過程の多様な局面で作用することも明らかになってきた。
動脈硬化の発生・進展には血管内皮機能の低下と炎症、酸化ストレスの亢進が関与する。これらは炎症細胞の内皮への接着と内膜への侵入、平滑筋細胞の増殖を引き起こすが、Ca拮抗薬はこれらの過程を抑制する。
血管内皮で産生される一酸化窒素(NO)は、異常な血管収縮、炎症細胞の接着と活性化、炎症性サイトカインによる平滑筋細胞の増殖などを抑制し、血管を保護する働きをする。酸化ストレスはこのNO産生を阻害し、動脈硬化を促進するが、Ca拮抗薬にはNO産生を高めるとともに、酸化ストレスに対し抑制作用を示すことが明らかになっている。すなわち、Ca拮抗薬は血管内皮障害、炎症、酸化ストレスのすべてに介入し、動脈硬化を促進する反応をブロックする。
臨床においてもCa拮抗薬の抗動脈硬化作用が証明
基礎研究で認められたCa拮抗薬の抗動脈硬化作用は、最近の大規模臨床試験からも証明されつつある。例えば、ENCOREから、長時間作用型ニフェジピン製剤が冠動脈疾患患者の内皮機能を改善するとともに、INSIGHTでは、IMTの肥厚や冠動脈の石灰化を有意に抑制することが報告されている。また、CAMELOTやJMIC-Bでは、冠動脈における動脈硬化の進展をIVUSやQCAを用いて評価した結果、いずれもACE阻害薬に比し、Ca拮抗薬において動脈硬化の進展を抑制することが報告されている。
これらの効果は、同等の降圧下で認められたものであり、Ca拮抗薬が降圧とは独立した抗動脈硬化抑制作用をもつことを示唆しているといえる。
松岡氏は以上の成績に基づき、Ca拮抗薬の心血管イベント抑制効果には、降圧作用とともに直接的な抗動脈硬化作用が寄与しているとの見解を示すとともに、今後は他剤との併用や生活習慣改善の介入などにおける有用性についての検討が望まれると述べた。しかしながら、これらを評価するには多くの症例と期間を要するとし、今後の課題として血管内皮機能や動脈硬化性病変を鋭敏で非侵襲的に評価しうる指標を確立し、臨床研究をさらに深めていく必要があると締めくくった。