Breakfast Topical Workshop

Hypertension Control by Subclinical Assessment of Potential Atherosclerosis

Hypertension and Endothelial Function: Effects of Antihypertensive Therapy

高血圧、冠動脈疾患における血管内皮機能障害と薬物治療

University Hospital Zurich, Switzerland
Thomas Lüscher

血管内皮は種々の血管作動物質を産生し、血管の収縮・拡張や平滑筋細胞の増殖を制御しているが、Lüscher氏は高血圧や冠動脈疾患が血管内皮機能の障害を伴うこと、その結果、血管収縮や平滑筋細胞の増殖を亢進させ、血小板との相互作用を通じて易血栓性を高めることを示すとともに、心血管イベントを抑制する薬剤の多くが血管内皮機能障害を改善する作用をもつことを示した。

高血圧症患者にみられる血管内皮機能障害

血管内皮は種々の血管作動物質を産生し、血管の収縮・拡張を制御するとともに、平滑筋細胞の増殖を促進あるいは抑制する。また、血流中の血小板との相互作用を通じて血小板凝集を促進あるいは抑制する。そこには多様な因子がかかわっているが、例えば内皮細胞で産生される一酸化窒素(NO)やプロスタサイクリン(PG I2)は血管拡張、平滑筋細胞の増殖抑制、血小板凝集の抑制に働き、逆に血管収縮因子として知られるエンドセリンは平滑筋細胞の増殖や血小板凝集を刺激する作用をもつ。

Lüscher氏は、この相反する作用をもつ血管作動物質のバランスに異常を来した状態が、高血圧や冠動脈疾患においてみられると述べた。例えば、本態性高血圧症患者では内皮依存性血管拡張反応の低下がみられるが、その原因を探索した結果、NO産生の低下が明らかになった。また、高血圧症患者にインドメタシンを投与すると内皮依存性血管拡張反応が改善するが、これはシクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害により内皮由来血管収縮因子(EDCF)の活性が低下したことを意味する。したがって、高血圧症患者の血管内皮では収縮因子の活性亢進と拡張因子の活性低下が同時に起こり、収縮機能が優位になると考えられる。これが血管内皮機能障害である。

冠動脈疾患患者の血管内皮機能障害をニフェジピンが改善

血管内皮機能障害は、血管収縮とともに平滑筋の増殖、血小板の凝集を促進するが、このような変化は長期的に動脈硬化を進行させるだけでなく、心血管イベントの引き金ともなる。血管内皮機能機能はアセチルコリンなどの内皮依存性拡張因子に対する反応によって評価することができるが、冠動脈疾患患者の血管内皮機能をこの方法で評価し、長期予後を追跡した研究により、血管内皮機能障害群は非障害群に比べ、心血管イベントが有意に多発することが明らかになった。

こうした知見を踏まえ、血管内皮機能障害を改善するための薬物の探索が進められ、これまでに、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、抗アルドステロン薬、エンドセリン受容体拮抗薬、Ca拮抗薬などの有効性が報告されている。Lüscher氏はその中で、Ca拮抗薬ニフェジピンの血管内皮機能に及ぼす影響を検討した臨床試験ENCORE(Evaluation of Nifedipine and Cerivastatin on Recovery of Endothelial Function)Iの成績を示した。

この試験では、冠動脈疾患患者の血管内皮機能に対する長時間作用型ニフェジピンとHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)の効果を検討した。被験者の冠動脈内皮機能をアセチルコリンに対する内皮依存性反応によって評価したあと、ニフェジピン単独、スタチン単独、両薬剤併用、プラセボの4群に無作為割付して6カ月間治療した後、再度内皮機能を検査し、治療前後の変化を検討した。その結果、ニフェジピンは冠動脈内皮機能をプラセボに比べ有意に改善した。

ニフェジピンは動脈硬化抑制作用、NO産生促進作用を示すことが早くから報告されているが、Lüscher氏はENCORE Iの結果はそれらの成績に通じるものであり、ニフェジピンが血管内皮機能障害を抑制することにより、高血圧や冠動脈疾患の予後を改善する可能性があると述べた。